国産豚肉産業の未来について考えたことってありますか?それはまあ…無いですよね。
私は結構考えます。
仕事と深く関わるので当たり前なのかと思いますが…
正直厳しい未来だろうなと考えています。
初めに断っておきたいのですが、私は日本の畜産業が発展することを願っています。
出来ることであれば、日本の畜産業の発展に貢献できればとも思っております。
ただ、私から見える(一面的かもしれないですが)日本の畜産業には厳しいものを感じています。
もし日本の畜産業に携わる方がこの記事を見て不快に思われるとしたら、申し訳ないです。
少しでも多くの人が日本の畜産業について考えていただけるきっかけになればと願っています。
目次
価格と品質はつり合っているのか?
今年2017年の豚肉相場は、非常に高いです。
前年対比で2桁を超えています。
その結果、スーパーやお肉屋さんの利益は圧迫されています。
以前のブログにも書きましたが、豚肉は相場品です。
www.butazou.com
でも、豚肉の相場が上がったからと言って、店頭の価格を上げることは難しいのです。
ただ、そもそも国産豚肉って高いのでしょうか?安いのでしょうか?
私は高いと思います。なぜなら、国産一般豚肉は外国産豚肉と明確な品質差が打ち出せていないにも関わらず大きな価格差があるからです。
国産一般豚肉とは、いわゆる普通の豚肉を指します。
特殊豚とは、黒豚や銘柄豚を指します。
実は国産一般豚豚肉と外国産豚肉は安全面・品質面において明確な差がありません。
詳しくは過去のブログをどうぞ。
www.butazou.com
むしろ、安全面においては特にカナダ産豚肉が国産豚肉より優れています。
そう考えると国産豚肉ロースが100g188円〜258円程度で店頭で売られることが多いのに対して、外国産豚肉豚肉は100g98円〜148円程度で売られることが多い状況は価格と品質が釣り合っていません。
どうして国産豚肉は高いのか?
なぜ国産豚肉は高いのでしょうか?
それは、2つあって、1つは養豚と豚肉加工の生産性の違いです。
もう1つはエサの輸送料コストの違いです。
このグラフによると豚1頭を生産するのにかかる総コストが日本ではアメリカの約2.3倍かかっています。
また、労働費が日本ではアメリカの約5倍で、エサ代は約2.4倍です。
労働費に関しては、アメリカは人件費安いからでしょと思われるかもしれません。
実は逆です。むしろ日本より高いかもしれません。
養豚に従事する人や食肉加工員の平均時給は、今の為替で計算すると1300円を超えます。
アメリカ食肉加工員の時給https://www.bls.gov/oes/current/oes513022.htm
なぜ生産性に大きな差が生まれてしまうのでしょうか?
豚肉加工工場で言えば、1工場で処理できる豚肉の頭数に20倍以上の開きがあります。
正確な統計数字は確認していませんが、私の知っている範囲で言うと日本では1工場で処理できる頭数は400頭/日ぐらいが多いです。
対してアメリカでは10,000頭/日を超える工場がほとんどです。
工場の見た目も、日本だと地域の体育館ぐらいの規模ですが、アメリカでは日本で言えば大きめの食品工場といった感じです。
工場の中身も全く違います。日本では、ほとんどの工程を作業者が手で行います。
アメリカでは手作業で行う工程もまだまだ多いですが、細かい作業以外は機械化が非常に進んでいます。
どうして、日本の工場は小さく機械化も進んでいないのでしょうか?
国産豚肉業界の低い生産性は農業政策が原因
8月1日の日経新聞畜産農家、規模拡大急ぐ EPA進展にらみコスト下げ :日本経済新聞に、国土が狭いことが規模の集約が進んでいない理由だと書かれていました。
私たちは小さい頃から、日本は国土が狭く大規模な農業ができず生産性があげられないと学校で習ってきました。
でも、それは本当なのでしょうか?
確かにアメリカやカナダに比べて日本は狭いです。
でも、現地にある規模の豚肉加工工場程度の施設は日本にも腐るほどあります。
例えば自動車工場だとか…
実際の理由はまだまだ勉強中ですが、日本の農政が生産性向上を押し進めてこれなかったことが原因だと思っています。
農政に携わる政治家と畜産を含む農家はWin−Winの関係がずっとあったと想像しています。
政治家にとっては、農家が小さければ小さいほど票になる。
農家は政治家を支援すれば補助金等の優遇をして貰える。といった関係です。
このような農政において、資本主義においての常識である生産性を向上させるという概念が置き去りにされてしまっていたのでしょう。
ただ、この関係も終わろうとしている(すでに終わった?)と感じます。
もう日本は豊かな国ではなく、補助金等を沢山出せる状況にないためです。
でも、気付いた時には時遅しでは…という状況です。
既に畜産先進国との生産性の格差は5倍ととても大きく開いているのです。
国産信仰が崩れる?
このように内情は厳しい国産豚肉業界ですが、現状は店頭に行けばまだまだ国産豚肉が沢山売られています。
日本のお肉売り場は平均的に9割国産豚肉、1割外国産豚肉を販売しています。
実際店頭で試食販売をすると、私は国産しか食べないというお客様は年配の方を中心に多いです。
多くの方は日本の食品は安全でおいしいと感じているのだと思います。
我々外国産豚肉肉を扱う業界人は、昔から国産が外国産よりも安全でおいしい根拠はないと知っていましたし、スーパーのバイヤーも多くの人が気づいています。
すでに、売り場の5割を外国産豚肉で販売するスーパーもあります。
*追記18年7月
今年国産豚肉の自給率が50%を切ったと報道がありました。
着実に輸入豚肉の販売が売り上げを伸ばしています。このご時世でも私たちの輸入豚肉の売り上げはずっと右肩上がりです。
豚肉売り場の未来
今後少なくとも数年間は(もしかしたら10年以上)、外国産豚肉の売り場構成比はどんどん拡大していくはずです。
国産豚肉は、一部の高級豚やブランド豚肉しか生き残れなくなってしまうと思われます。
高級豚とは、黒豚やアグー豚などで、ブランド豚とは平牧三元豚などです。
また、非常に難しいとは思いますが、アメリカやカナダ並みの養豚施設や豚肉生産工場を日本に作り生産性を畜産先進国に近づけることができれば、外国産豚肉の拡大に歯止めをかけられると思います。
これは、国を挙げて取り組む課題になってくる内容です。
皆さんは、国産豚肉産業の未来をどうみてますでしょうか?
お前は何いってるんだもっともっと明るいんだぜとか教えていただけたら幸いです。
まずは、国産豚と外国産豚肉の食べ比べをしてみてはいかがでしょうか?
違いの少なさにびっくりするはずです。
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