ぶたぞーブログ

みなさんに豚肉を中心としたすべての肉をおいしく、賢く食べていただきたいです。豚道の道のりはとてつもなく長そうですが、お付き合いいただけたら嬉しいです。肉業界の裏話などもしています。

外国産豚肉にまつわるすごい温度管理の話!!

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外国産の豚肉って冷蔵(チルド)で日本に輸送されてくるって知ってましたか?もちろん冷凍で郵送されてくる豚肉もありますが、実は多くのアメリカ産・カナダ産豚肉は北米大陸から冷蔵のまま輸送されて日本に輸入されます。そして、一度も凍ることなくスーパーやお肉屋さんに並びます。…えっそうなの?って思いませんか?

今日はそんな疑問を探っていきます。

目次

1、冷蔵外国産豚肉ってどれぐらい売っているの?

では、数字で見て見ましょう。

グラフは少し古いですが、平成25年2月では6万トンの豚肉を輸入して、その内のおよそ2万トンは冷蔵となっています。なお、最近はおよそ3万トンが冷蔵となっております。ちなみに、冷凍で輸入される豚肉はウインナーやベーコンなどの加工肉になったり、外食で使用されることが多く、店頭に並ぶ外国産豚肉の多くは冷蔵なのです。

実際、店頭で冷凍肉を解凍して販売する時は食品表示法で「解凍」と記載しなければなりません。

写真のように解凍肉は必ず(解凍)表記があります。つまり、解凍と書いていない肉は冷蔵なのです。今まで気にされたこともない方が多いと思いますが、皆さんの購入されているアメリカ産・カナダ産豚肉は多くの場合冷蔵品なのです。

でも、アメリカやカナダから輸入する時って、輸送時間が長くて豚肉は腐ってしまうのでは?と思われると思います。そうです。豚肉の輸送は船で行われるため時間がかかります。

でも、腐りません。現代の技術は凄いのです。北米豚肉加工工場の衛生管理は厳格ですし、輸送中の温度管理も非常に低い温度で保たれて輸送中されます。

冷蔵の豚肉の賞味期限は部位によって多少異なりますが部分肉(ロースやバラなど)に加工して真空パックをかけてから40日〜55日程度あります。とっても長いですよね。これだけの時間があれば、充分北米の工場で加工して、日本に輸入してスーパーやお肉屋さんで販売することができます。

2、外国産豚肉がお店に並ぶまでのスケジュール

大体のスケジュール感は

豚肉加工工場〜日本の港まで 25日くらい
日本の港の冷蔵倉庫で保管 7日くらい
冷蔵倉庫〜日本各地のスーパーやお肉屋さんまで 2、3日

なので、北米の豚肉加工工場で加工されてから35日前後で日本のお店に並ぶと言うわけです。はい、賞味期限内に間に合いましたね。

真空パックされたロース

3、外国産豚肉の賞味期限が長いわけ

さて、それはそうと何で賞味期限が40〜55日もあるんだよって思いますよね。何か怪しい保存料とか使ってるんじゃないかと思うかもしれませんが、それは違います。私は北米の豚肉の加工工場にのべ十数回視察に行っていますが、どの工場も本質的にやろうとしていることは極めてシンプルです。部分肉を徹底的に清潔な状態のまま真空パックします。その後は温度を-1℃〜0℃ぐらいの豚肉のが凍らないギリギリの温度で保管し続けできるだけ細菌の増殖をおさえて輸送するのです。それだけです。

ただ、言うは易し、行うは難し。豚肉の加工工場の中は夏でも室温が5℃〜10℃で保たれ、作業者の方達はとても寒い中で1日中仕事をしてます。また、手洗いは当然加工室に入るたびにしなければならないし、白衣、ラテックスグローブ、長靴、帽子、マスクの着用も必須です。さらに、加工室内のまな板や包丁などもおよそ2時間おきの休憩の度に洗浄され、まな板は作業が始まる前には真っ白になっています。もしかしたら、汚くて、臭い工場を想像されているかもしれませんが、全く違います。隅から隅まで清潔で、嫌な臭いもしない工場なのです。

動物の筋肉は我々人間も含めて、そもそも無菌状態です。ただ、栄養満点なので、細菌がつくと増殖しやすく腐ってしまいます。そのため、理論的には豚肉を清潔な空間で清潔な道具で加工していけば、細菌の付いていない腐らない肉ができるのです。実際はそんなことは無理ですが…ただ、最大限その理想的な状態に近づこうと日々努力を続けて豚肉加工工場は今日も動いています。

次に、輸送中の温度管理です。先ほども言ったように-1℃〜0℃の状態をずっとキープして日本まで来ます。まず、真空パックされた部分肉はダンボールに詰められて、冷凍庫のようなところで一気に冷やされます。その段階で肉の表面温度は2℃前後ぐらいです。その後は、温度管理されたコンテナに移され、トラックで北米の港まで運ばれ、コンテナのみ切り離されて船に積まさり温度管理された状態で太平洋を渡ります。またまたコンテナごとトラックに移され日本の冷蔵倉庫に運ばれます。そうです。コンテナは加工工場で閉められたあとは、日本の冷蔵倉庫に来るまで一回も開けられません。日本の冷蔵倉庫でも0℃近い温度で保管され、日本のトラックで運ばれる時も1、2℃です。はい、見事に北米からお店先まで-1℃〜2℃に維持されたまま届きました。

ちなみに、肉は水ではないので、0℃以下になっても凍りません。ただ、-2℃くらいからは凍ってしまいます。

どうでしたでしょうか?賞味期限を50日前後つけると言うことは、それだけの理由があったのでした。国境を越えた人々の見事な連携プレーで、今日も冷蔵外国産豚肉はお店に並んでいるのです。